Interior Idea
〈盆栽〉09 日本の風光と四季を部屋に
古来より日本では四季を句や歌によみ、絵に描き、料理にまで季節と自然を見立ててきました。
四季を文化として愛し、暮らしに取りいれ根付いた伝統を持つ地域は、日本の他に多くはありません。
自然の景色と季節のうつろいを生活空間で愛でる術──盆栽もそのひとつです。
昭和のマンガでは、父親が大切にしている盆栽の鉢を主人公の少年が割ってしまって怒られるのがお約束でした。
後にあの盆栽は高価だったり、手塩にかけて育てたものと知ってからは、なぜ家の中に置かないのかと疑問に思ったこともあります。でも、子どもながらに「樹木は屋根の外にあること」が自然なことだと感じていたのかもしれません。
生活空間に自然の要素を取り入れる「バイオフィリックデザイン」は、すでにトレンドを超えて定着しました。
観葉植物のリースや切花のサブスクリプションなど「手軽にリーズナブルに」植物を楽しむ方法が増える一方で、手間をかけて育て、生長や変化を味わい愛でる人も増えています。ベランダガーデニングや自家農園、そして盆栽や苔玉の人気の高まりはその表れと言えるでしょう。
インテリアショップが軒を並べる東京・中目黒で盆栽を扱い、海外からもお客様が絶えない「Green Scape」清水祥子さんにお話を伺いました。
「うちのお客様には盆栽は初めてという方が多いので、まず『外に出せるか出せないか』をお聞きします。その環境があるのか、ご自身で手入れをすることができるのか。陽の光を浴び自然の風を通すことは、盆栽にとって大切なことなんです」
オフィスや窓がないような部屋ほど植物を置きたくなりますが、盆栽の「自然の風景を切り取って鉢の上に再現する」という趣旨からすると、全く外に出せない環境は、本来は盆栽向きとは言えません。
「風通しのよい外に出す時間をなるべく作り、メンテナンスできれば良い状態を保てます。外に出すことが難しい環境の方は、観葉植物でお作りしている苔玉などは比較的室内の時間が多くても管理しやすいので、そこから始められるのもおすすめです」
昔は中高年男性の趣味というイメージが強かった盆栽も今は世界中に愛好家が増え、Green Scapeにも20〜30代の若いお客様が目立ちます。
「剪定や手入れについてはアフターケアや教室も行っています。興味があれば最初から失敗を恐れずに、まずひとつお気に入りを飾ってみてください」
〈松柏〉
松に代表される常緑針葉樹。比較的育てやすく風格も抜群。
〈雑木(葉もの)〉
モミジやイチョウなど、四季を通じてその変化を楽しめます。
〈花もの〉
香り高い梅や華やかな桜、藤など、開花を待つのも楽しみ。
〈実もの〉
柿やリンゴなど、花が実となり、その色の変化も味わい深いもの。
〈草もの〉
苔玉やスミレなど野山に自生する野草を使い、手軽で人気上昇中。
Green Scape グリーンスケープ
- 東京都目黒区上目黒1-18-4 セルジエ102
- tel:03-5721-1661
- access:東横線・日比谷線中目黒駅徒歩2分
- https://greenscape.co.jp