ZEN CLUB

2022年 08 月号 Number. 544

<ZENグループの今>プロジェクトing

東京都品川区 大井競馬場

下見所騎手控室・馬主会館新築工事

制約もやりがいに 「馬が第一」の新築工事

大井競馬場 下見所騎手控室・馬主会館 完成予想パース

「東京シティ競馬(TCK)」の愛称で親しまれている大井競馬場(東京都品川区)。
レース時には多くの人が集まるパドック横で現在、騎手控室と馬主会館の新築工事が行われています。
工事を手がけているのは、ZENグループ・池田建設株式会社(東京都千代田区)。
大井競馬場と関わりの深い同社が挑む新しい挑戦について、
同社建築部工事所長の東由晃さんと、主任の杉浦省吾さんにお話を聞きました。

60年以上にわたるお付き合い

池田建設は昭和6(1931)年の創業以来、薬師寺白鳳大伽藍(奈良市)の復興をはじめとする社寺などの伝統建築から、官公庁、オフィスビル、マンション邸宅まで幅広い分野で数々の実績を積んできました。

この大井競馬場でも1958年を皮切りに60年以上にわたって数々の工事に携わり、2015年にはスタンド「G-FRONT」のリニューアル、2018年にはメガイルミネーション関連工事などを請け負っています。

そのような中で池田建設は現在、大井競馬場「下見所騎手控室・馬主会館」の新築工事に取り組んでいます。2022年1月に着工しましたが、レース期間中は工事を進めることができません。数々の制約がありながらも、今年11月末の竣工を目指して日々、工事が進められています。

特徴的な建物に集まる期待

「下見所」とは別名「パドック」と呼ばれ、レースに出走する馬がスタッフにひかれて周回したのち、騎手が騎乗する場所のこと。レース直前の競走馬を下見できるので、競馬ファンにとっては各馬のコンディションを見極める必見の場所です。

今回の工事では、パドック横に騎手控え室と馬主会館が一体化した建物と、誘導馬馬房、さらに倉庫を新築。馬主会館は現在、別の場所にあり、建物の老朽化が進んでいましたが、今回の工事を機にパドック近くに移転することになります。

建物は地上3階建で、1階に騎手控え室、2階と3階が馬主会館になります。建物はパドックの形に合わせてゆるやかなカーブを描いたデザインで、色使いも自然に風景となじむ落ち着いた色合いで統一。現在、パドック横に建っている騎手控え室などが入った建物は、新しい建物が完成したのち、解体される予定です。

大井競馬場
大井競馬場

デザイン性と機能性に光る遊び心

「G-FRONT」と同様、設計は株式会社松田平田設計(東京都港区)が担当。新築される建物は、パドックに面する壁全体を、ルーバーで覆うことが特徴的です。ルーバーとは、細長い羽根板を複数、隙間をあけて平行に並べたもののこと。ルーバー板の採用で日射や外からの視線は遮りつつ、光や風を十分に通すことが可能になります。

さらに今回の新築工事では、建物内部からパドックの馬をよく観察できるよう、ルーバー板の取り付け角度を巧みに調整。またその間隔は無機的な等幅ではなく、馬が駆けるリズムを感じさせます。「遊技場の建物ですし、設計者さんの遊び心を感じました」と言うのは東さん。「この建築パースを最初に見たときは、ルーバーがすごく印象的でした。競馬場を訪れる皆さまから注目される建物になると思いますので、頑張らなければいけないなと気を引き締めました」。

一方、デザインの良さはもちろんですが、施工者として考えなければいけないのは強度。「大井競馬場は海に近いため、塩害や強風の影響も考慮しなければいけません。安全な施設であることが第一ですので、設計者さんと確認しながら工事を進めています」(東さん)。

競馬場ならではの苦労とは

工事で苦労しているのはスケジュール管理。大井競馬場では基本的に毎月、約1、2週間の開催期間でレースが開かれていて、その期間は工事ができません。

「パドックの競走馬はレース前で緊張しています。そこに工事の音や振動が原因で馬が興奮し、暴れると事故になりかねません。そのため当然、レース開催中の工事は控えなくてはならず、スケジュール的にはかなり厳しいものとなります」(東さん)。

パドック横での工事になるため、足場や囲いは競走馬があまり気にならない白色をチョイス。「一番に馬のことを考えている、というところでは、他の工事とは全く違います」と東さんは話します。また「夜中の2時ごろから翌朝午前中にかけて練習する馬もいるため、夜間の工事も控えなければいけません。いろいろな制約がある中、手探りで工事を進めています」(杉浦さん)。

完成に向けて尽力

大井競馬場イルミネーション
「行ってみたいイルミネーションランキング※」1位にも輝いた「メガイルミネーション」 ※ウォーカープラス 2020-2021 イルミネーションランキング

7月に鉄骨が建てられ、11月の完成に向けて徐々に形を表していく予定で進められていますが、現在、世界情勢が混乱し先が見えない状況です。今後資材不足に陥ることも懸念され、これまで以上の制約や思いもよらない困難にぶつかるかもしれません。しかし、「一般的なマンションなどとは違い、競馬場独自の建物ですので、携わる面白さがあります」と前向きな東さん。杉浦さんも「レースがあるときは必ずテレビ中継で映る建物なので、完成が楽しみです」と話し、状況に応じて柔軟に対応しながら、完成に向けてまい進していく決意を語ってくださいました。

「ここは騎手や馬主さんが使う建物で、一般のお客様が中に入る施設ではありませんが、競馬場を訪れた方が必ず目にする建物ですので、完成を楽しみにしてもらいたいです。いまや競馬場は、さまざまな楽しみ方ができる場所になっています。冬季には“東京メガイルミ”というイルミネーションイベントも開かれています。ぜひ大井競馬場にご家族でお越しください」(東さん)。

大井競馬場を訪れたときやテレビ中継の際には、同社の挑戦の結果として、パドック横の騎手控室・馬主会館にもご注目ください。

東由晃さん
杉浦省吾さん
山下和冴さん

建築部工事所長 東由晃さん、工事主任 杉浦省吾さん、お二人と共に活動しているチーム最年少21歳の山下和冴さん

官公庁から民間オフィスビル、邸宅、社寺等の伝統建築まで建設「池田建設」
池田建設株式会社
〒102-0074 東京都千代田区
九段南2-4-16 九段ZENビル
TEL.03-3263-2900
https://www.ikeda-kk.co.jp/