Interior Idea
〈有松絞り〉07 日本の伝統技術をモダンスタイルに
スマートなインテリアに和のテイストを取り入れた「和モダン」は、根強い人気のジャンルです。 フローリングにソファの洋室でも、ファブリックに和素材を取り入れれば手軽に和モダンに。 注目は、立体的な「絞り染め」。名古屋の伝統的な「有松絞り」をご紹介します。
古来から世界中で行われてきた染色は、日本でも縄文時代に染められた編み物が発掘されています。
布の一部を糸で縛るなどして布を染める「絞り染め」は、奈良時代にはすでに登場していました。技法としては素朴なもので、世界各地に自然発生的に生まれたと見られていますが、日本の絞りは特に技法の種類も多く、世界的にも「shibori」の表記で通用しています。
染色技法が日本で大きく開花したのは江戸時代と言われ、有松絞りも江戸時代の初め頃、現在の愛知県名古屋市有松町地域で誕生しました。
その軽やかで涼しい感触の木綿絞りは主に浴衣地として愛用され、地域一帯は全国でも屈指の絞り染め産地となりました。
他地域でも絞り染めは行われていましたが、100種にも及ぶ圧倒的な模様の種類を誇る有松絞りは、1975年に「有松・鳴海絞」として国の伝統的工芸品に指定されています。
和テイストの魅力は、なんと言っても落ち着いた雰囲気。
和室が少なくなった今は畳や襖、障子がない家も増えました。しかし、洋室のインテリアにも「和」を取り入れることは難しくありません。
日本住宅といえば木の風合いがポイントです。柱や床などに木の素材が使われていない部屋でも、家具に木材を選び、そこに和のファブリックを合わせましょう。和風の布というと、いわゆる「和柄」をイメージする人も多いですが、絞りは主に幾何学的な模様なので、モダンなインテリアにも相性抜群。
さらに有松絞りは模様の種類も豊富です。また、絞りの立体的なテクスチャーは、無地の布にも独特のニュアンスを生み出します。
有松絞り作家の安保成子さんは、インテリアに取り入れた絞りの魅力を、こう語ってくださいました。
「絞りの印影の美しさは、染めを重ねるグラデーションや凹凸による立体感で、空間の中に多彩な表現ができることです。
1点ずつ制作に取り組む手仕事なので、ホテル、ショールーム、古民家など、空間のコンセプトやテーマカラーに沿って、カスタマイズができるのも魅力のひとつです」。
安保成子
- ABO NON KIKAKU主宰
- tel:03-3760-7167
- https://www.abononkikaku.com/
有松絞り作家。和文化伝統コンシェルジュ。愛知県名古屋市で400年続く有松絞りを制作、和文化体験、和マルシェなど企画。