ZEN CLUB

2022年 04 月号 Number. 540

不動産・建設関係のトレンド

4月からスタート 「マンション管理計画認定制度」

現在のマンション市場は「いくらで売れるか」「いくらで貸せるか」などの資産価値に基づいて売買されています。
その価値の判断基準にこれから大きく影響を与えると言われているのが、4月1日から施行された「マンション管理計画認定制度」。

老朽化などで大規模な改修が必要になる将来を見据え、適切な修繕計画が立てられているか、その費用は積み立てられているかなどマンション管理計画は重要度を増しています。その評価認定制度と成り立ちの背景を見てみましょう。

管理組合の主体性に一任されていたそれまでのマンションの管理運営

「マンション管理適正化法(マンションの管理の適正化の推進に関する法律)」は2001年、「マンション建替円滑化法(マンションの建替え等の円滑化に関する法律)」は2002年に、マンションの適正な維持管理と再生の円滑化を狙いとして施行されました。

当時はまだ「良好な管理状態」とされる明確な基準がなく、管理組合の会計業務を行う管理会社への法的なルールもありませんでした。管理組合や区分所有者もマンション管理への意識が低いケースが多く、中には管理会社の倒産により、銀行などの債権者が修繕積立金も含めてすべてを押さえてしまい、管理組合の全資金が消えてしまったという事件まで起きました。

その後、管理組合の積立金は管理会社の財産とは分別し管理することを定めるなど、さまざまな規定を盛り込んだ法令の制定や保証機構を創設。管理組合の資金は担保され、億単位の積立金が蒸発するような悲惨なことはなくなりました。

その後、管理適正化法と建替円滑化法は一部が改正され今年4月1日より施行されましたが、その背景にはマンションの老朽化と、所有者や居住者の高齢化が色濃く影響しています。

高齢化の問題はマンション管理にも今回の改正の背景とは

国土交通省によれば、2020年末時点で築40年以上経過したマンションの数は103.3万戸。それが10年後の2030年末に231.9万戸、20年後の2040年末には404.6万戸にまで増えると予想されています。

また、マンションに「永住するつもりである」と回答した人は 62.8%で、前回調査の52.4%から増加。年齢が高くなるほど永住意識が高くなる傾向も見られました。しかし、建物も入居者も高齢化した時、積立金の不足で大規模修繕工事が実施できない事態も想定されます。また、建て替えや維持管理などの重要な意思決定に際して、区分所有者間の価値観や経済力などが異なるため合意形成ができない場合や、そもそも区分所有者が揃わないケースも珍しくありません。

このままでは高齢化とともに管理不全となり、相続放棄、空家、廃墟へと深刻化が懸念されることから、今回の法改正によって国が基本方針を示し、地方行政が助言・指導していこうとしているのです。

国と行政が積極的に関与するマンション管理計画認定制度

例えば、建物の老朽化や管理業務の停滞、資金不足などによって適切な維持管理が行われないまま設備や住戸が放置された場合、管理不全や管理費の未納リスクにつながるだけでなく、周辺地域の防災・衛生・景観にまで悪影響を及ぼします。

こうした事態を未然に防ぐための「健全な管理」と、すでに老朽化し維持が困難な物件の「再生の円滑化」が今回の改正の狙いです。

重要なポイントは、マンション管理に対して国や行政がより能動的に関与していこうとする意思が見える点です。今回の法改正には「マンション管理計画認定制度」の実施と「認定基準の設定」が組み込まれており、これは国主導で認定基準を定め、地方行政が認定制度を実施することでマンション管理の向上を図ろうというもの。「管理計画認定制度」で主体となるのはマンションの管理組合ですが、公益財団法人マンション管理センターを通してマンション管理士に国の基準を満たす適切な管理が行えているか確認してもらい、満たしていれば適合通知が届きます。その適合通知を市や区(町村は都道府県)に申請して認定を受ける仕組みです。

認定されたマンションは、マンション管理センターのホームページなどで公表され、第三者がチェックできるようになります。そして適正に管理されていないと判断されるマンションについては、自治体が指導・助言・勧告を行います。

つまりマンションの購入を検討している人にとって「認定を受けているかどうか」は、公的評価に基づく重要な指標になるわけです。認定を受けていれば評価が高まり、受けていないと下がる可能性があります。

それが住む人、購入する人の管理意識向上につながり、管理の適正化が促進され、その結果この認定制度の認知度が高まり、認定を受けられるよう管理の質を高めるマンションが増加するという、好循環の創生が期待されています。

管理計画認定事前確認の流れ(イメージ)

管理計画認定制度はマンション市場の重要な差別化要因に

現在、日本のマンション区分所有者世帯主の約半数が60歳以上となりました(国土交通省のマンション総合調査)。35歳で新築マンションを購入したとして、築40年となった時には75歳。

その時に建て替えとなった場合、建物を取り壊す費用と新たに建てる費用、工事期間の仮住まいや2度の引越し費用も必要と考えると、住まいの再生計画は入居時から準備を考えていなければなりません。

これまで駅からの距離や築年数、施工会社のブランドなどがマンションの付加価値になるとされてきました。しかし今後は永住・住み替え・売却のいずれにせよ「管理計画認定」も大きな資産価値になります。認定への努力がなされないままのマンションは、将来に向けての管理計画がなされていないということであり、逆に認定を受けたマンションは評価が高まり資産価値も上がり、売却時も有利になる可能性が期待されます。

今後の評価基準として大きな差別化要因と言えるでしょう。

TOPIC

マンション購入の際に昔から言われてきた大事なポイント「マンションは管理を買え!」

マンションにとって管理状況が重要だというのはわかっていても、外からはなかなか見えない部分です。

ライフポート西洋では「管理評価制度登録支援」として、両制度の概要や注意点、そしてお客様(管理組合)への提案・登録申請までのプロセスなど、管理組合の窓口となる当社フロント社員に対して情報共有を行っております。

この両制度の目的である「マンションの適切な管理と評価する新しい仕組み」が大切であることをアピールし、「マンションの資産価値向上」や「良好なマンションストックの形成」に寄与してまいります。

混同しやすいキーワード

築後30、40、50年超の分譲マンション数

1.マンション管理適正化法

2001年に施行された、正式には「マンションの管理の適正化の推進に関する法律」。マンション管理士の資格を定め、管理業務主任者の設置を義務付けるなどマンション管理の適正化を推進する法令。

2.マンション管理計画認定制度

「マンション管理適正化法」の改正に伴い、2022年4月よりスタートした公的な認定制度。マンションの管理組合が作成した管理計画を、国が制定した指標に基づき地方行政が認定する制度。

3.マンション建替円滑化法

2002年に施工された、正式には「マンションの建替え等の円滑化に関する法律」。耐震不足や老朽化などで建て替えや解体が必要になった際、区分所有者の同意基準を緩和するなど建て替えを支援する法令。

ワンポイント コラム

もうひとつの管理評価「マンション管理適正評価制度」

国の基本方針に基づき、地方公共団体が計画を策定する「マンション管理計画認定制度」とは別に、一般社団法人マンション管理業協会による「マンション管理適正評価制度」もこの4月からスタートしました。これは、マンション管理業協会が不動産関連団体と協力し、全国共通の管理に関わる評価基準を設けた新しい制度です。

個々のマンションの管理状態や管理組合の運営の状態を、評価者(管理業務主任者・マンション管理士)が評価し、インターネットを通じて情報を公開します。マンション管理計画認定制度の認定基準が16項目+αであるのに対し、マンション管理適正評価制度では30項目に及び、評価結果の有効期限も1年間で更新が必要。条件が厳しくなっていますが、管理状態の優劣を数値化して表示したり、管理計画認定制度では是か否かの二択しかないところを、6段階での評価になるので、管理組合の目標設定や運営改善の目安になります。

また、マンション所在地の地方公共団体が管理計画認定制度を策定していた場合は、双方の申請を同時に行うワンストップ申請手続きも可能です。