静岡県静岡市 大成ビルド株式会社
ドローンを使った屋根点検のサービスが好評
静岡県静岡市のZENグループ・大成ビルド株式会社(代表取締役社長・津村聡)では、ドローンで上空から屋根の状態を点検するサービスを無料で実施しています。
現地に赴き、実際に操縦するのは津村社長。
どのようなきっかけ、思いでこのサービスを展開しているのでしょうか? 津村社長にお話を伺いました。
きっかけは古くからのお客さまの要望
2021年にZENグループの一員となり、新しい一歩を踏み出した大成ビルド。
前身の大成住宅から40年以上にわたって培われてきた「大成ブランド」の信頼は厚く、創業当時からのお客さまとのご縁は今も変わらず続いています。
そのような中、長くお付き合いのあるお客さまから住宅のメンテナンスについて相談を受ける機会が増加。
屋根に関する相談も多かったことから、4年ほど前から新しく始めたのがドローンを使った屋根の無償点検サービスでした。
ドローンを屋根点検に使うメリット
近年の住宅で、屋根に最も多く使われている薄い板状の「スレート瓦」(通称:カラーベスト、コロニアル)は定期的な塗装が必要で、劣化を放置すれば雨漏りのリスクが高まります。
一般的に10年から15年の間隔で再塗装を検討した方がよいと言われますが、立地や環境によって状態は変わるため、専門家に点検してもらい、必要に応じて早めの対応を取るのが望ましいとされています。
また古くからある「陶器瓦」は耐久年数が高いものの、何らかの原因で割れや欠け、ズレが生じる場合があります。
こちらも気になる状況があるときは、専門家に見てもらう必要があるでしょう。
一方、瓦の点検は足場を組んで、屋根全体を確認するのが望ましいものの、「ちょっと見てほしい」という住人の要求に応えるには大掛かりです。
そのため、屋根にはしごをかけたり、カメラを棒に取り付けて屋根まで伸ばして撮影したり、といった方法で点検するケースが一般的となっていますが、全体の状況を把握するのには限界があります。
そこで大成ビルドでは、より的確に状況を確認できるよう、津村社長の操縦でドローンを屋根点検に活用するサービスをスタートさせたのです。
国家資格を取得して安全に運航
同社ではもともとドローンを物件紹介の動画撮影で使っており、津村社長が講習を受けて民間の操縦資格を取得していました。
その後、2022年に国家資格の「無人航空機の操縦者技能証明制度(操縦ライセンス制度)」が始まってからは、「二等無人航空機操縦士」の資格も取っています。
ドローンなど無人航空機(100g以上)の飛行は、航空法によって飛行形態などが規制され、どこでも自由に飛ばせられるわけではありません。
たとえば「空港等の周辺」「緊急用務空域」「150m以上の上空」「人工集中地区」など、ほかの航空機の航行に影響を及ぼすおそれのある空域や、落下した場合に地上の人に危害を及ぼすおそれが高い空域でドローンを飛行させる場合には、あらかじめ国土交通大臣の許可を受ける必要があります。
ただし国家資格には一等無人航空機操縦士と二等無人航空機操縦士の2つのカテゴリーがあり、資格があれば人口密集地区上空の飛行や、人・物との距離が30m未満の飛行などで申請を省略する
ことができます。
ただし二等の資格では、補助者や看板の配置で第三者の立ち入りを規制する措置を取らなければいけません。
そのためドローンによる屋根点検の依頼があったときは、津村社長と補助者となる社員の2人体制で訪問。
ドローンの飛行制限がないエリアで、離着陸ができるスペースがあれば、周囲の安全確認をして実施します。
細部まで点検できお客さまにも好評
まずは上空から全体を写したあと各面、棟や雨どいなどの細部を撮影。
「写真は高画質なので細かい隙間や損傷、ウキなども鮮明に確認できます。
場合によっては動画で撮影することもあります」(津村社長)。
撮影中、ドローンカメラの映像はiPadでも確認します。普段見ることのできない屋根の様子や、クリアな映像とドローンの動きにも皆さま興味津々で「こんなふうになっているんだね」など驚かれるそうです。
時には近隣の方が見学に来られることも。
事務所に戻ったのち、撮影した画像をパソコンで読み込み、さらに細部を確認できるのもドローン撮影のメリットです。
「とても鮮明に映し出されていますので、瓦が1枚ずれているだけでもよく分かります。弊社には建物検査士の資格を持つ社員もいますから、画像をもとにリスク度を判定し、写真と共に報告書にまとめてお客さまに差し上げています」(津村社長)
無料で点検サービスを行う理由
それにしても、同社はなぜ無料で点検に応じているのでしょうか。津村社長はその理由について「ドローンによる検査を実施し、その結果、今すぐ御用命いただくことはなかったとしても、いずれ屋根はもちろん、ご自宅のことで何かリフォームが必要になったとき、まず弊社を思い出してほしい、という願いを込め、無料にさせていただいています」と語ります。
特に昨今は、飛び込みの営業マンが自宅を訪問し、強引に修理を勧誘する事例が増加。
リフォーム会社を装って家の様子を伺う詐欺など犯罪の手口も横行しています。
そのため安心して頼める業者に屋根の点検をお願いしたい、と考える人は多く、新規のお客さまからのドローン点検サービス申し込みも増えてきているそうです。
そのような場合も、点検をきっかけに関係性を構築できることを期待し、現在は無料で実施しています。
サービスの拡大も検討
今後はさらにこのサービスを拡大し、リクエストに応えていきたい、と津村社長。台風や爆弾低気圧など激しい気象災害に見舞われる機会も増えてきているだけに、屋根の点検は平時にしっかり行っておいてほしい、と語ります。
「以前、台風被害に見舞われたエリアで、多くの家屋で屋根が破損したまま、しばらくの間ブルーシートをかけて凌がなければいけない状況になりました。
その地域の被害家屋が多く、修理の手が回らなかったからです。そうならないよう、なるべく推奨されている10年から15年ぐらいの周期で屋根のメンテナンスをするのが、建物全体の寿命を長く保つ秘訣だと言えます」(津村社長)。
将来的には測量や災害時の物資運搬など、社会に役立つサービスにもドローンを活用していきたい、と考えている同社。
「このような夢を実現していくためには今より高性能なドローンが必要ですし、専門の部署も立ち上げなければいけないでしょう。
まだ明確な見通しはたっていませんが、お客さまのリクエストにお応えする体制を整えていきたい」と津村社長は話していました。
実際にお客さまへ提出した「屋根点検報告書」の一部。普段の生活の中では目にすることがない屋根の現状を高解像度で確認することができ、建物検査士資格を持つ社員からのコメントとあわせて好評をいただいている。