ZEN CLUB

2024年 12 月号 Number. 572

不動産・建設関係のトレンド

4月から家選びの基準が変わる?「省エネ基準」適合義務化

これまで「省エネ基準適合義務」の対象だったのは大規模・中規模の非住宅のみでしたが、2025年4月からは省エネ法の改正によって、原則すべての住宅・建築物の新築・増改築が対象となります。

ではこの「省エネ基準」とはどのようなものでしょうか。今回の法改正によってどのような影響が考えられるでしょうか。

今知っておくべき基本のポイントをおさらいしましょう。

これからの新築・増改築には不可避「省エネ基準適合」の義務化とは

2050年カーボンニュートラル、2030年度温室効果ガス46%排出削減(2013年度比)の実現に向け、2021年10月、地球温暖化対策等の削減目標を強化することが決定されたのを受け、我が国のエネルギー消費量の約3割を占める建築物分野における取組みが急務となっています。

2024年にも省エネ法の改正がありましたが、現在の制度で省エネ基準の適合が義務付けられている建物は「非住宅」かつ300㎡以上の「中規模建築物・大規模建築物」のみでした。

それが改正法施行後は義務の範囲が大幅に拡大され、「すべての新築建築物(政令で定める10㎡以下の建築物は適用除外)」が義務化の対象となり、省エネ基準への適合性審査が実施されます。

所管の行政庁や第三者機関(登録住宅性能評価機関)で着工前と完工後の省エネ適合性判定を受け、基準を満たして確認済証や検査済証の交付を受けなければ着工も引渡しもできなくなります。

また省エネ基準の段階的な引き上げは今後も予定されており、2025年の改正法施行後からは現在の「省エネ住宅」が新築の基準レベルとなり、さらに2030年には「ZEH水準」の省エネ住宅が新築の基準となります。

新築物件の広告には「省エネ性能ラベル」の表示が必要に

2024年4月から「建築物省エネ法に基づく建築物の販売・賃貸時の省エネ性能表示制度」もスタート。

事業者は新築建築物の販売・賃貸の広告等において、建築物の省エネ性能を示す「省エネ性能ラベル」を表示することが必要(努力義務)となりました。

消費者が建築物を購入・賃借する際に省エネ性能の把握や比較ができるようにするもので、3つの項目で表します。

1.エネルギー消費性能

国が定める省エネ基準からどの程度エネルギー消費量を削減できているかをみる指標(BEI)を、星の数で示しています。

2.断熱性能

日本全国を8区分に分け、各地域の気候条件等を基に基準値を定め「建物からの熱の逃げやすさ」「建物への日射熱の入りやすさ」の2つの指標により、建物の断熱性能を評価します。

3.目安光熱費

住宅の省エネ性能に基づき算出された電気・ガス等の年間消費量に、全国統一の燃料等の単価を掛け合わせて算出した1年間の光熱費を目安として示しています。

省エネ適合義務化によって家選びはどう変わるか

2030年には適合基準のさらなる引き上げが予定されており、省エネ性能が基準に満たない物件は資産価値の低下が予想されます。

例えば、1981年の耐震基準改正により「旧耐震/新耐震」が区別され、現在の耐震基準を満たしているか否かは家選びのスタンダードとなりました。

旧耐震はローンが通りにくかったり、相場より安く取引される傾向も見られます。

省エネ基準も同様に、今後は家を選ぶ時の大きなファクターとなりそうです。

国が省エネ住宅を推進している今は、補助金や住宅ローン減税、フラット35借入金利の引き下げなどもありますが、省エネ住宅が「基準」になった先のことはどうなるかも考えておいた方がよいでしょう。

いまさら聞けないキーワード

省エネ住宅

家庭でのエネルギー消費量を抑えるための設備や建築資材を導入した住宅。

「断熱」「日射遮蔽」「気密」の3つの性能があり、壁や窓など外皮性能の高さと、冷暖房や給湯など一次エネルギー消費量の削減率の基準を満たしているかが第三者機関により評価され、証明書が交付されて初めて「省エネ住宅」といえる。

ZEH(ゼッチ)住宅

省エネ住宅の中でも高性能な断熱材や窓・玄関等を設置して外皮の断熱性能等を大幅に向上させるとともに、室内環境の質を維持しつつ一次エネルギー消費量を20%削減し、さらに再生可能エネルギーを導入することにより年間の一次エネルギー消費量の収支がゼロとなることを目指した住宅。

※ラベルはイメージです
省エネ性能ラベル」国土交通省 https://www.mlit.go.jp/shoene-label/ をもとに編集部作成

1.エネルギー消費性能

星の数が増えるほど省エネ性能が高いことを示しています。

2.断熱性能

家のマークが増えるほど断熱性能が高いことを示しています。

3.目安光熱費

年間にかかる光熱費の目安を記載しています。