Interior Idea
interior idea 34 暮らしに馴染む伝統とモダン 〈南部鉄器〉
その魅力が今や海外にも伝わる南部鉄器。
お茶がおいしくなり、貧血を予防し、そして大切にすれば孫の代まで使える「一生もの」といわれています。
平安後期から伝わる伝統工芸でありながら、今なお進化を続ける南部鉄器について、及富 9代目 菊地海人さんにお話を伺いました。
今年5月、ドジャーズ大谷翔平選手がインスタグラムで紹介し、世界から注目を集めた南部鉄器。
良質の天然資源に恵まれた岩手県を代表する伝統工芸品であり、およそ平安時代後期に藤原清衡が近江国(滋賀県)より鋳物師を招いて生産したのが始まりと伝えられています。
南部鉄器といえば鉄瓶と鉄急須。よく似ていますが、用途と内側の処理が異なります。
鉄瓶は中に水を入れ、直火やIHにかけてお湯を沸かす、やかんと同じ役割。お湯を沸かすときに鉄が水のカルキを吸着し、お茶がまろやかにおいしくなります。
一方の鉄急須は茶こしがついており、そこに茶葉を入れ、お湯を注いでお茶を淹れます。
鉄瓶と鉄急須、一つで兼用したいという方には「鉄瓶兼用急須」タイプがおすすめです。
約800年もの歴史を持つ南部鉄器ですが、大量生産・大量消費の時代には多くの工芸品と同様に生産量の縮小が続き、及富も例外ではありませんでした。
しかし、岩手県が2010年の上海万博に向けて進めた南部鉄器の対中輸出戦略をきっかけに明るい兆しが見え始めます。
お茶の大国・中国の富裕層に鉄瓶が広まると、爆買いブームを経て知名度が世界的に高まりました。
この頃から海外生産の模造品が急増したこともあり、業界に先駆けて2022年に国際発送が可能なオンラインショップを開設。
模造品を見分けるには、値段が極端に安い、生産者やメーカーの名前をインターネットで検索しても表示されない、説明文の日本語に違和感がある、販売元・発送元が日本(JP)ではない、などに注意しましょう。
「南部鉄器は代々受け継ぎ守ってきてくれた人たちのおかげで今があります。それを次の世代に引き継いでいくことが自分の使命です」(菊地さん)
南部鉄器工房 及富
- 岩手県奥州市水沢羽田町宝生57
- 0197-25-8511
- https://oitomi.jp/