不動産・建設関係のトレンド
大家になるのに資格は不要。でも… 賃貸管理のリスクは 「知識」が減らす
賃貸用の物件を所有していれば、特別なスキルも必要なく賃貸経営を始めることができます。しかし経営の成功に知識や情報が必要なのは、どの事業でも同じ。大家に必要な資格はありませんが、賃貸経営に役立つ知識が得られる資格についてご紹介します。
「大家」とひと口に言っても、一棟アパート・マンションや区分マンション(一戸単位)、戸建、また駐車場や倉庫など、物件のパターンはさまざま。それも土地や建物をすでに所有しているのか、これから購入するのかなどによって、投資額もリスクや利回りも大きく変わります。さらに、立地などの諸条件や物件の状態などもその後の収入を左右します。
では賃貸経営にはどんなリスクがあるのでしょうか。まずは空室リスク。空室からは収入は得られませんので、空室を減らすことは大家の最も重要な仕事と言えます。次に家賃滞納も含めた入居者のトラブル。騒音やゴミ出しなど入居者同士のトラブルもあります。そして、築年数の経過や周辺環境の変化により賃料が下落するリスクも考えられます。
物件の管理形態には、全てを大家自身が行う「自主管理」や、委託会社に管理業務全般または部分的に任せる「委託管理」などがあります。「自主管理」では、トラブルやクレームが発生した際はすぐに自分で対応しなければなりませんが、管理費用は抑えられます。「委託管理」でプロに管理を任せれば、精神的・肉体的にも負担を大幅に軽減できますが、当然その分のコストが発生します。
物件取得に必要な資金や不動産投資ローンから、さまざまな契約や手続きに関する法律の知識、入居者募集から退去までの管理だけでなく、所有する物件についてどれだけ深く理解しているかも賃貸経営には重要です。資格は必要ありませんし、管理会社に委託すれば安心です。それでも知識は良い管理会社を選ぶのにも役立ちますし、リスクから守り、助けてくれるに違いありません。
賃貸経営に役立つ知識重視の資格6選
不動産実務検定
(一財)日本不動産コミュニティー
[合格率] 2級:69%/ 1級:46% ※共に一般検定受験者(検定試験)
2級は賃貸経営に必要な法律や税務・会計、賃貸借契約、リスク対策など賃貸管理運営実務に関する知識。1級は不動産投資実務全般、不動産関連法規、土地活用に関する知識・技能、建築構造に関する知識など、総合的・専門的な知識。
賃貸不動産経営管理士
(一社)賃貸不動産経営管理士協議会
[合格率] 30%程度
入居審査や入居中の管理、契約終了・更新時の対応、空室維持管理業務など、主に入居中~退去・更新までの長い期間の仕事を専門とする業務管理者」要件の国家資格。賃貸借契約全般、建物や設備の管理や入退去管理の知識など。
管理業務主任者
(一社)マンション管理業協会
[合格率] 2022年の合格率は18.9%
マンション管理業務主任者が管理組合などに対して管理委託契約に関する重要事項の説明や管理事務報告を行う際に必要な国家資格。管理事務の委託契約、管理組合の会計管理、マンション管理の適正化推進に関する法律など。
ファイナンシャル・プランニング技能士
(NPO法人)日本ファイナンシャル・プランナーズ協会、(一社)金融財政事情研究会
[合格率] 3級:60% ~ 80% / 2級:35 ~ 50%/ 1級:7 ~ 18%
資産設計のアドバイザーとして、お金の流れに関する専門知識を活かせる国家資格(FP民間資格もあり)。金融機関からの融資や、不動産を貸し出す際の家賃設定、税金や相続などについても役立つ知識を得られる。
日商簿記
日本商工会議所
[合格率] 3級:30%~50%程度/ 2級:15~30%程度/ 1級:8~13%程度
固定資産の減価償却といった知識を身につけることができ、賃貸経営における利益や負債などの費用についての知識が学べる。帳簿の内容から収支バランスの判断を行い、賃貸経営の財政状態を俯瞰で捉えられるようになる。
中小企業診断士
(一社)中小企業診断協会
[合格率] 1次試験:30%程度、2次試験:20%程度で、実質的に6%程度
経営コンサルタントの国家資格として、ビジネスに関する幅広い知識やスキルを身に付けることができるため、付加価値や差別化、競争回避といった経営者が考えなければいけない知識が賃貸経営にも役立つ。