Interior Idea
interior idea 25 時代を越える子への願い 〈雛人形〉
かつては七段飾りで豪華さを競っていた雛人形。近年は住宅事情などから三段飾りや二人飾りが主流になっています。和室が減少した現代では、洋風インテリアにもマッチするモダンでコンパクトな雛人形が人気。江戸木目込人形の伝統技法を今に伝える柿沼東光の雛人形をご紹介します。
平安時代中期、節句に宴を催す宮廷の公式行事「節会」と、上流階級の少女の遊び「ひいな遊び」、そして人形に災いを移して川や海に流す風習が融合したのが雛祭りの始まりと言われています。
当時は乳幼児の死亡率が現代とは比較にならないほど高く、子供の健康を願う切実な思いが、全国各地で節句の風習として現代まで伝わってきました。
江戸時代には雛祭りの行事はますます盛んになり、この頃から附属の人形や道具の種類も増えて贅沢な物が作られるようになります。雛壇は三段から五段に、幕末には七段の雛飾りが現れます。
三人官女、五人囃子、右大臣・左大臣(随身)、仕丁(従者)といった主な構成は全国的に共通してみられますが、人形の持ち物や飾り方などでは関東地方は主に武家を、関西地方は御所・宮中を模したものが多いようです。
「2020年工業統計調査」(経済産業省)によれば出荷額が最も多いのは埼玉県で、2番目に多い愛知県の約7.4倍。全国シェアも5割近くを占めています。
埼玉県は豊富な水源や桐などの材料に恵まれ、また日光街道や中山道の宿場町として栄えたことから雛人形作りが盛んになり、伝統産業として発展しました。
経済産業大臣認定伝統工芸士であり、数々の表彰を受ける二代目柿沼東光氏、その名を冠するブランドを展開する柿沼人形の工房も埼玉県にあります。
創業は1950(昭和25)年。螺鈿の象嵌、彩色二衣重などの独自技法を追求しながら、江戸木目込人形の伝統と革新を積み重ねてきました。
木目込人形とは、桐塑(桐の粉末にのりを混ぜて作った粘土)や木で作られた本体に筋彫りを入れ、布の端を押し込んで衣裳を着ているように仕立てた人形のこと。
軽くて型崩れもしにくく、比較的小さなサイズの制作も可能と、現代にマッチした特徴があります。柿沼東光では、マンションなどのリビングにも調和する「Compact」のほかにも、初代柿沼東光から継承される独自の技法を施した「Craftsmanship」、デザイナーを起用し独創的なデザインをプロデュースした「Designers」など、多彩なスタイルの雛人形を提案しています。
雛祭り1000年の歴史と、その昔から受け継がれる子の健やかな成長への人々の願いを思うと、お雛様の顔も一層優しく見えてくるのではないでしょうか。
株式会社柿沼人形
- 埼玉県越谷市新越谷1-21-11
- 048-964-7877
- JR「南越谷駅」、東武伊勢崎線「新越谷駅」西口より徒歩10分
- https://www.kakinuma-ningyo.com/