ZEN CLUB

2023年 12 月号 Number. 560

<ZENグループの今>プロジェクトing

神奈川県横浜市 株式会社 ZENウェルネス

医療依存度の高い入居者も積極的に受け入れる

「断らない介護・看護」を目指す老人ホーム

ZENホールディングスの一員として2013年に設立された、介護事業を専門とする法人「ZENウェルネス」(東京都千代田区)。
神奈川、千葉、東京、埼玉に介護付有料老人ホーム「アシステッドリビング」11施設を展開しており、その中でも最も新しいのが神奈川県横浜市の「アシステッドリビング保土ヶ谷」です。「 要介護度や医療依存度の高い入居者様にも、幸せな時間を過ごしてもらいたい」と語る大塚健司施設長らに、日々の仕事にかける想いなどを聞きました。

医療依存度の高い入居者も受け入れる

左から、三上さん、大塚施設長、仙道さん 谷の挑戦はまだ始まったばかりです

 「アシステッドリビング保土ヶ谷」は2022年3月1日にオープン。緑に囲まれた小高い丘の上に立ち、横浜ランドマークタワーやベイブリッジが一望できるなど見晴らしの良さが自慢です。居室総数は82室。リゾートホテルをイメージした館内は清潔感があり、明るい雰囲気で利用者やその家族から好評だと言います。

一番の特徴は、要介護度や医療依存度の高い方々の入居率が、ほかの施設と比べて高いことです。具体的にはZENウェルネス全体の入居者にお
ける平均介護度が2.7に対し、アシステッドリビング保土ヶ谷は3.2。また2023年10月末現在、経鼻経管栄養が4人、胃ろうが15人と医療依存度の高
い入居者が多く、たんの吸引を必要とする人や末期がん患者なども積極的に受け入れています。その背景には、施設長である大塚健司さんの信念がありました。

大塚さんは歯科技工士や企業での営業職を経て、37歳のときに介護業界へ転身。最初の勤務先で目の当たりにしたのは、医療依存度の高い入居希望者を会社の方針などから十分に受け入れられない現状でした。

「施設への入居がかなわず、病院で最期を迎えられる方が多いと知りました。自宅での介護が難しい人でも、自由に家族が面会に来られる施設で、幸せな時間を過ごしてもらいたいと願うようになりました」(大塚さん)。

 その思いを全うするため、2023年4月にアシステッドリビング保土ヶ谷で施設長に就任以降は、スタッフと連携を取りながら、要介護度や医療依存度の高い人を受け入れられるよう体制を整備。「多職種連携を密に行い、“断らない介護・看護”を念頭に置き、医療依存度の高い方も安心して生活していただける環境を構築してきました」と語ります。

スタッフとの連携

 職員は36人。大塚さんのもとで生活相談員、ケアマネジャー、看護・介護職員などスタッフ全員が一体感を持って協力しあい、入居者の暮らしを支えています。

スタッフの一人、ケアマネジャーの三上泰史さんは、介護保険制度が開始された頃から介護業界で働いてきたベテランです。

「介護福祉士、ケアマネジャーとステップアップしていく中で自分自身を高め、やりがいを持って働けると思いこの業界を選びました。在宅ケアマネや特別養護老人ホームでの勤務などを経て、この施設ではオープン当初から働いています。近隣を散歩される入居者様が鳥のさえずりや、季節の花々を楽しんでおられて、環境の良さを感じます」(三上さん)。

一方、看護主任の仙道史さんは20代の終わり頃、サービス業から介護業界へ転身。30代前半で病院勤務となったことをきっかけに、働きながら資格を取り看護師となりました。

「以前、従事していたサービス業に比べて、誰かのために働いているという意識をより強く持てるので、やりがいのある仕事だと感じています」(仙道さん)。

 フィリピンやモンゴルなど外国人スタッフも7人在籍。大塚さんは「文化や価値観、行動様式など違いはありますが、人のお世話をしたい、役に立ちたいという介護・看護に対する思いは一緒です。むしろ異国の地で困難や苦労もある中、仕事をやり遂げようとする志は日本人以上だと感じるときもあります」と話し、苦楽を共にする仲間として関係を構築しているそうです。また三上さんも「介護福祉士の資格を目指している外国人スタッフが多いので、日本語が難しいところなどを教えたり、試験勉強のサポートをしたりしています」と話し、チームの一体感を支えています。

地域医療との信頼関係を大切に

 老人ホームへの入居は通常、仲介企業からの紹介で決まることが大半です。しかしアシステッドリビング保土ヶ谷は市民病院など近隣の医療機関から直接、入居について相談を受けるケースが多いと言います。地域医療との連携が図れているのは、信頼関係が結ばれていることの表れです。

「病院も、私たちの施設であれば大丈夫だろうという安心があって紹介してくれていると思います。ありがたいと思うと同時に、病院に迷惑をかけないようしっかりやろうと気が引き締まる思いです」(大塚さん)。

スタッフたちもその思いを受け止め、日々、介護や看護にあたっています。仙道さんは「医療依存度の高い入居者様には適切なケアをさせていただきながらも、病院ではなく老人介護施設での看護ですので、介護や訓練についても理解を深めるよう意識しています」と話し、広い視野を持って働いていきたいと語ります。

入居者家族とも連携し万全の体制を

要介護度や医療依存度の高い入居者の受け入れにあたっては、スタッフの理解と協力が得られているのはもちろんですが、入居者家族との連携も重要だと大塚さんは言います。

「他の施設では受け入れが困難な方には、ご家族様を交えて入居に際しての思いをお聞きしながら、ホームに求められることや期待されること、また具体的な支援内容を丁寧に確認させていただきます。

入居者様のご家族とよく相談し、入居実現に向けて共に協力しあう関係を築くようにしています。しっかりとご納得の上でご入居いただけるように、とにかくよく話し合うことを大切にしています」(大塚さん)

「病院から退院された後の生活を不安に思われているご本人やそのご家族様は、私たちの施設に入居が決まったときにホッとした顔をされるんですね。お役に立てていると感じ、私もうれしくなります」(三上さん)。

入居後も入居者家族とのコミュニケーションを積極的に取るようにしています。

「日々、ご家族様に変わって入居者様の様子を見させてもらっていますので、面会に来られた際にはお声がけをして様子をお伝えしています。それだけでも安心感が全然違うと思います」(仙道さん)。

「日本一の施設を目指したい」

今後は、入居者一人ひとりのバックグラウンドなどをスタッフが理解したうえで個別のアクティビティ計画を作成し、行ってみたいこと・やってみたいことの実現を目指していくそうです。「思い出の地にもう一度行きたい、釣りをしたい、野球をしたい、といった夢に対してスタッフが協力し、ご家族様と連携を取りながら実現させたいです。とにかくできることは何でもやる、という思いです」(大塚さん)。

受け入れ先が見つからず困っている人たちを「何とかしてあげたい」という願いから、「日本一の施設にしたい」という決意へ。アシステッドリビング保土ヶ左から、三上さん、大塚施設長、仙道さん 谷の挑戦はまだ始まったばかりです。