ZEN CLUB

2023年 09 月号 Number. 557

不動産・建設関係のトレンド

シンプル志向にマッチする いまどきの「コンパクト平屋」

シンプル志向にマッチするいまどきの「コンパクト平屋」

近年、新築戸建を計画する際に平屋の注文住宅を選択する人が増えています。2階建てと同じ床面積を平家で確保しようとすれば敷地も2倍必要となり、建築費用も割高になることが多いですが、コンパクトな平屋であれば総費用も抑えられます。
平屋ならではの良さが再認識される今、シニアだけでなく若い子育て世代からも注目を集めています。

「コンパクト平屋」人気の秘密

広い敷地に2階・3階建ての大きな家こそが理想のマイホームとされていたのも今は昔。例えば、本は電子書籍となり、読書家の人も大きい本棚は必要ではなくなりました。スーツケースやスノーボードなど普段使わないものだけでなく、服や靴、バッグもレンタルで済ませられる時代。“所有すること”にこだわる必要がなくなり、ものを少なくシンプルに暮らしたいと考える人が増えています。

また、子どもの独立や自分達の老後など、家族のライフステージの変化も考えた時、大きな家を管理するよりもコンパクトな住まいの方が快適に暮らせるのではと、今、平屋が見直されているのです。

具体的に平屋のメリットとはどんなことでしょうか。

●家事や生活の効率よい動線

洗濯機が1階で物干しが2階だったり、居室のある2階にはトイレがないなど、2階建てでは生活動線が複雑になっていることが少なくありません。

コンパクトな平屋なら家事の移動距離も短く、全てが同じフロアにあるため、生活動線が効率的です。

●バリアフリーにしやすい

幼い子どもや高齢者にとって、階段の上り下りがないということは、それだけで安全性が高まります。

高齢で階段が使いにくくなったため、2階スペースが使われなくなってしまうケースも多いようです。

●災害などの緊急時に強い

平屋は高さがないため構造的に安定しており、風の影響を受けにくく、また地震や火事などの緊急時にもすぐに避難しやすいこともメリットの一つです。

●天井を高くして広々空間

上からの荷重が少ない平屋は、柱や壁が少ない広々とした大きな空間を確保しやすくなります。

天井の高さも自由に設定できるので、面積を高さでカバーする空間作りや大きな窓での採光も可能です。

また、スキップフロアやロフトなどいろいろなアイデアで個性的な間取りも実現できます。

●家族のコミュニケーション

コンパクトな平屋では、廊下などのスペースを取らない設計をすることが多く、リビングを中心に他の部屋とも距離が近い間取りで、自然とコミュニケーションが生まれやすいスタイルになります。

●光熱費やメンテナンス費を抑えやすい

部屋数が少ないコンパクトな間取りなら空調設備も少なく済み、電気代を抑えることができます。

外壁の修繕や塗装、屋根の修理などが必要になった時も、大掛かりな足場を組む必要がありません。

トレーラーハウスなどバリエーションも

近年シンプルなライフスタイルを求める人々にとって「小屋」も注目の的。別荘や仕事場、趣味の工房などに使われることが多いですが、昨今のアウトドア志向から、自然の中に住まうための小屋を建てることも。中には全てを自分一人で作り上げる人もいますが、基礎や重要な構造部分はプロに依頼し、外装・内装はDIYでというハーフビルドも人気です。

「トレーラーハウス」は、車の居住性を高めたキャンピングカーとは異なり、あくまでも家が主体の「移動が可能な住居」のこと。キッチンや風呂、トイレなどの生活に必要な設備や、電気、ガス、水道などのライフラインも一般住宅と同様のものを備えます。

ただしこれらの配線や配管が「工具を要さずに取り外し可能かどうか」が重要なポイント。なぜなら「随時かつ任意に移動できるか」を基準に、日本ではトレーラーハウスは建築物ではなく「車両を利用した工作物」としているためです。

「適法に公道を走れること」も条件の一つ。「コンパクト平屋」として一般住宅ではなく、あえてトレーラーハウスとすることには
車両扱いならではの利点があります。

まず、市街化調整区域など建物を建てられない場所にも設置が可能なこと。建築確認や基礎工事の必要もありません。また、不動産ではないため固定資産税や不動産取得税の対象外となります。ただし、自動車取得税や自動車重量税、自動車税などは必要で、トレーラーハウスの金額やサイズなどによって異なります。

シンプルでコンパクトなスタイルは令和の暮らし方のキーワード。「コンパクト平屋」も住まいの選択肢にいかがでしょうか。