不動産・建設関係のトレンド
コロナ後はどうなる? マンション共有部の コワーキングスペース
リモートワークの継続に企業と従業員に意識のズレ?
新型コロナウイルス感染症を機に急速に一般化したリモートワークですが、2022年後半から全国的に、多くの業種で実施率の低下傾向が表れてきました。
これは多くの企業がリモートワークを働き方改革ではなく「一時的な感染拡大防止策」としか考えていなかったためとも言われています。
一方で「家族との時間をとりやすくなった」「通勤などのストレスフルな行動をカットできた」など、継続を希望するリモートワーク経験者は約9割※1と、継続意向度は高い割合で推移を続けています。
出社勤務に戻るくらいなら他の企業へ転職するといった自主退職者の増加も懸念されており、企業には対応が迫られているのも事実です。
NTTグループでは従業員の働く時間や場所の自由度を高めるとして、with/afterコロナ社会においてもリモートワークを基本とすると発表。また、働き方改革を推進するソフトバンクグループはテレワーク実施率95.9%※2という高い割合を占めました。
そんななか増えているのがコワーキングスペース付きのマンションです。フリーランスや個人事業主、また近年は社員の副業を認める企業も増えているのを背景に、自宅で作業することが多い人々の増加により、コワーキングスペース付きの物件はますます人気が高まっています。
ワークスペースが創出する新たなコミュニティ
ではコワーキングスペースとはどんなものでしょうか。シェアオフィスとは何が違うのでしょうか。
実はどちらも、複数の企業や個人が作業スペースを共有するオフィス形態であり、明確な定義はありません。シェアオフィスは個々や企業ごとに作
業に集中する「作業空間の共有」として捉えられることが多い一方、コワーキングスペースは様々な職業の人たちが交流できる「コミュニティスペース
兼作業場」という文脈で発展してきました。
しかしこれらはあくまでも傾向であり、多様な作業空間が次々に登場している今では、両者を分ける線引きはほとんどなくなってきています。
コワーキングスペースを中心にコミュニティを作り上げることを目的としたマンションの建設も増えています。ワークスペースの他にラウンジや会議
室、キッチンなども備え、仕事だけでなく居住者同士が交流する場所としても利用されます。
また、古くて活用が難しくなっていた社員寮をリノベーションする動きも見られます。プライベートなワンルームの居住空間に加え、入居者専用のコ
ワーキングスペースや24時間利用できるリモート会議の個室ブースなどを設置。在宅のデメリットとして挙げられる「コミュニケーション不足」も、社
員寮なら心配ありません。
コワーキングスペースはマンションの付加価値を上げる
マンションの共有スペースといえば通常はエントランスや廊下、エレベーター、駐車場・駐輪場、ごみ収集場などですが、高付加価値のマンションにはクリーニングの受付ができたり、住民のさまざまな要望に応えるコンシェルジュが常勤するようなものもあります。
さらにはゲストが宿泊できる部屋やバーベキュー設備が完備されていたり、フィットネスジムやプール、サウナなど、マンションの付帯設備はますます多彩になってきました。
共用のコワーキングスペースを備える物件は今後も増加が見込まれます。既に市場に投入されている物件も入居申し込みは順調傾向で、コワーキ
ングスペース付きマンションはもう珍しいものではなくなりました。これからは専門分野に対応できる高度な設備や機能を備えていたり、リラックスできる環境や人との交流など、スペースの特性を打ち出した差別化が求められていくでしょう。
この先も企業に対して、社員のワーク・ライフ・バランスの重視や働き方改革の推進を求める動きが衰えることはないはずです。働き方の変化や多彩な広がりとともに、オフィスの在り方、働く場所の選択肢も変化するでしょう。それに伴ってこれまで当たり前だった住まいの形、住まい方も変わっていくかもしれません。